雪のなかで...

いつのまにか、暖房を入れたまま寝てしまった。
目が覚めると、曇った窓ガラスごしに
雪が降っているのが見えた。


民宿のような旅館の朝食は手作りで
お米が甘くて美味しかった。


富山駅まで移動してレンタカーを借り、得意先へ...
打ち合わせが終わって外に出ると雪はやんでいたが、立山連峰は未だ雪に煙っていた。


そんな雪のなかを歩いてみたい。
吹きつける雪に向かって、顔がこわばるほどの寒風の中を...
誰もいない道を独りで歩いてみたい。
そんな思いにとらわれて、富山市内から山の方角にハンドルを切る。


今日は大阪へ移動するだけなので、夕方までは時間がある。
急な坂道を登り始めると、一気に景色が変わり雪が降り始める。
市内から30分余り走っただけで、一面の雪景色。
去年の秋にも一度来た利賀村は、2mを超える雪に包まれていた。


主な道路は除雪されているが、歩行者用の橋などは積もったまま
集落にも人が住んでいないのではないかと思うほど静まり返って人影も見当たらない。
集落のはずれの家のない場所まで行って車を停め、雪の中を歩く。
白と黒...それ以外の色はなにもない、水墨画の世界。
川のせせらぎ以外には何も聞こえない、静かな世界。
空を飛ぶものも、地を走るものもない、たったひとりの世界。







橋の欄干つかまって、寒さに耐えられなくなるまで、
川の流れを見降ろしたり、遠い山を眺めたりしながら、その場に立ち尽くしていた。




帰り道...山間を降りていく細い下り坂... 
スタッドレスタイヤを過信して40km/hでカーブに入る。
後ろのタイヤが滑りだす。
このままだと雪の壁にぶつかる...
冷や汗をかきながらブレーキはアブナイと判断してハンドルを逆に切り
エンジンブレーキを使いながら軽くブレーキを踏んで、なんとか回避。
しかし、今度は逆方向に滑り出す。ハンドルを使ってごまかしごまかし、なんとか停止。
橋の手前ぎりぎり、一歩間違えば柵のない川に堕ちていたかも...
そこからはゆっくり運転して山を下りる。


先ほどの風景が夢のなかのできごとだったような街中に戻って
富山駅から特急電車に乗った。