峠越えのトンネルを抜けて長い下り坂にかかると、霧のような細かい雨が降りはじめた。カーテンの襞のように折り重なりながら降ってゆく雨のむこうで左右に迫る山々の青葉も、狭い空を覆う雲も、次第に光を失っていった。 山が切れて灰色に霞んだ水平線が見え…
「うちの桜を撮ってくださって、ありがとうございます」背後から突然声をかけられて、はっとした。振り向くと、小柄なおばあさんが微笑みながらそこに立っていた。 うちの桜と言ったよな...もしかして人の敷地に入ってしまったか...覗いていたファインダーか…
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