西側の山の稜線から現れた雲が、薄墨が拡がるように青空を覆っていった。 不意に降りはじめた霙がフロントガラスにへばりついて、山々の紅葉を滲ませた。 ワイパーに拭われるごとにできる扇のなかの紅葉の絵巻は、コマ送りのように姿を変えながら、窓ガラス…
渓流から湧きあがった風が、川面にかかる木々の葉を漣のように揺らし 樹木のまわりで小さな渦をつくりながら、緑の大気のなかに溶けこんでいった。 水の音だけが強くなったり弱くなったりしながら、谷に響いていた。 国道から川沿いの脇道に折れて間もなく森…
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