2017-07-01から1ヶ月間の記事一覧

散りゆく蓮華

泣いている夢を見ていて目が覚めました。何故泣いていたのかは覚えておりません。それでも、微かな胸の痛みと頬に涙がつたった跡が残っているのをみると本当に泣いていたようでございます。 下を覗いてみたら葉っぱの上に、もう白くなってしまったわたしの花…

ひまわりの祈り

丘を越えてなだらかな下り坂に入ると、国道の左手に広大なひまわり畑が現れた。 空を覆う雲の上を昇りゆく太陽の、微かな気配を追うように ひまわりの群は、うなじを傾けたまま東を向いて弱々しく立っていた。 時おり吹いてくる生暖かい南風の向うには太平洋…

花を拾う

夕暮れとともに、渾身の力をこめて開いた五弁の花のその先に こじれた運命の糸のように絡まった繊維が、ほどけるようにしてひろがっていった。 陽は既に落ちていたが、水分を含んだ重い熱気は、 草いきれの残滓とともに沈殿物のようにいつまでもそこに漂って…

苦海浄土

不知火というどこか妖しげな名前には似つかわしくないほど、蒼い海だった。干潟にできた まだらな水盤の上を、真っ白な雲がまだらのままゆっくりと流れ浅すぎて波になりきれない波紋が、幾重にも干潟に寄せては消えていった。 この海だったのか...子供の頃に…