2017-09-01から1ヶ月間の記事一覧

闇の向うの光

魔に誑かされる時...人はきっとこんな気持ちになるのだろうと 僕はこの池の前に来るたびに思う。 魔と言うものは、決して恐ろしい顔などしていない。 水面に映る景色のあまりの美しさに正気を失い 現実と非現実の見境がつかなくなって、くらくらと眩暈がして…

南吉の彼岸花

まっすぐに天を指して伸び上った太い茎の上に 身をよじるほどの熱い想いが、炎のように咲いていた。 新美南吉という早逝の作家を偲んで植えられた無数の彼岸花の赤が 曲がりくねった川に沿って、どこまでも続いていた。 『ごん狐』の物語の哀しみが、不意に…

おわら風の盆

黄金色に染まった田園を渡ってきた風が山の斜面で不意に乱れて木々の枝を不規則に揺らしていた。 それでも空を覆う雲に動く気配はなく…井田川から立ちのぼるざわめきの向うで祭の衣装に身を包んだ踊り手が通りに姿を現した。 富山平野から飛騨高山へと続く山…