2015-03-01から1ヶ月間の記事一覧

成長しつづける作家

橋の下から轟音が聴こえた。 欄干から身を乗り出して覗き込むと、 滔々と流れる井田川の、そこだけ傾斜のきつくなった川底のくぼみに水がなだれ込み 岩にぶつかって激しく砕け散っていた。 飛騨の山々から流れ落ちてくる雪融けの水なのだろう... 以前、大糸…

茜に染まる

心臓の手術を受けた友の見舞いに行った帰り道 畑のなかに立つ、一本の白木蓮に出会った。 ふわっと開いたやわらかな花びらは 色づきはじめた夕方の陽射しをあびて、儚げに空を見上げていた。 やがて萎れゆく短いいのちを知ってか知らずか 天を見上げて、一心…

椿落つ

春未だ浅い雨上がりの午後 城址の濡れた石段を、ゆっくりと昇っていった。 梅は終わり、桜はまだつぼみのままだった。 石垣の間を抜けたところで、不意に視界に飛び込んできた艶やかな色にドキンとした。 緑鮮やかな苔の絨毯の上に、深紅の椿が散らばってい…

小淵沢の朝

雨音で目を覚ました。まだ5時前だった。 いつの間に眠ってしまったのか...暖房を入れたままで、部屋は暑いくらいだった。 昨日の6時に横浜を出て、愛知県の岡崎経由で新潟県妙高市まで走り、 神奈川に戻る途中、小淵沢で力尽きて、インターに近いペンション…

ポートライナーに乗って...

カーテンの隙間から、白み始めた空が見えたので、 起き上がって窓辺に行くと、ポートライナーが港の方向に走っていくのが見えた。 ふと、朝の海が見たくなって慌てて着替え、ホテルを飛び出した。 早朝の神戸港を見下ろしながら、無人の電車はゆっくりと走っ…

ひとり立つ

腰のまがった老婆が長靴を引きずるようにして船着場に出てくると そこに屯していた海猫がいっせいに飛び立った。 空には重い雲が折り重なるように広がっていた。 黒部漁港から黒部川に沿って、車を走らせた。 愛本を過ぎて宇奈月温泉に続くトンネルをくぐる…