2015-11-01から1ヶ月間の記事一覧

皇帝ダリア

薄紫の大きな花が、不釣り合いなほど細い茎の先でじっとうなだれていた。 得体のしれない哀しみが彼女の胸につかえているようだった。 日曜日の午後、ぐずぐずと寝床から這い出て遅い食事をとり散歩に出かけた。 11月ももうすぐ終わるというのに、緑道の楓の…

山茶花の道

わが恩人に贈る 山茶花の 降りしきる午後 山茶花の 木立のなかへ あなたに逢ひにゆきました 山茶花の くれなゐに染む 山茶花の 降り積む道を あなたに逢ひにゆきました 山茶花で にぎわう森の 山茶花の 梢のさきに あなたは咲いてをりました 山茶花に 染まら…

おまけ

富山... 雨に濡れる紅葉 能登半島七尾の焼き牡蠣

待つということ

男は海を見ていた。 鉛を融かしたような海は、流れゆく雲の色を映しながら、音もなく揺れていた。 先刻までの雨でずぶ濡れになったが、男は身動ぎひとつせずに、そこに座っていた。 穴水の漁村に生まれ、この海とともに生きてきた。 父がしていたように、い…

備忘録...

朝の立山 夜の食事 居酒屋『艶次郎』

希い

愛本橋の上空には、鈍色の曇がかかっていた。 晴れていたら、南東の空に白い三日月が出ていたはずだった。 あの小説に出てくるゴッホの『星月夜』と同じ光景は、現実のものではなく 宮本先生のこころに浮かんだ月なのだろう... それでもいつの日か、この山の…

闇を抜けて...

工場地帯の向こうから真っ赤な旭日が姿を現した。 特急電車のガラス越しに差し込んだ朝陽で染まった自分の顔が、ガラスに映った。 流れゆく景色の中で、雲を染め、川面を染め、家々の屋根を染めながら 太陽は凄まじいスピードで上昇していった。 昨日、深酒…