2015-02-01から1ヶ月間の記事一覧

魔物の棲むところ

足元の水面を覗き込んで、思わず後ずさりしそうになった。静かな水面の上の光景が、一瞬魔物の姿のように見えたのだ。軽井沢の森には魔物が棲んでいる...そんな先入観が、こころのなかに映じたのかもしれない。 よく見れば、それは美しい冬の森の姿であった…

「死」について

日の出前に布団を抜け出して、浜辺に出た。 ブルーグレーの凪いだ海は、砂浜で微かに波立っていた。 海を渡ってくる潮風が心地よかった。 この海で亡くなられた方々のことを思い、東天に向かって掌を合わせた。 小さな船が、漁に出ていく... 船尾から生じた…

津波のあとに...

碧く美しい海が、静かに横たわっていた。 壊れたままの校舎の窓枠が、それを一枚の絵画を縁取る額のように見えて 過去と現在が...現実と非現実が...生と死が... 意識のなかで混乱してめまいを感じた。 真っ黒な魔物に豹変した海は、海辺の街を一瞬にして飲み…

苦悩をつき抜けて

春を探しに野に出た。 厳しい寒さのなかで震えながら闘う友に 春の訪れを知らせたかったから... 冬は必ず春になることを、思い出してもらいたかったから... しかし、二月の枯野に色はなく、花の蕾も固く閉じて震えていた。 諦めて帰ろうとしたその時、住宅街…

水音

垂れこめていた雲が切れて、立山連峰の中腹に、光の帯が走った。 魚津から富山市内に戻る途中... 美しいその姿を眺めながら、 ふと、あの方が先週訪れた八尾の街の佇まいが心に浮かんだ。 あの方が歩かれたであろう冬の諏訪町の坂を歩いてみたいと思った。 …