2017-04-01から1ヶ月間の記事一覧

遙かなる立山

早月川の清らかな流れのはるか方に 雪を頂いた立山の蒼い山並みがそびえ立っていた。 何十回も富山に来ていて、 こんなに澄み切った立山を見たのははじめてのことだった。 いつも霞んでみえる山々がこうしてはっきりと見えると、どうも落ち着かない。 美しい…

七年目の桜

4月にしては少し強すぎる陽射に背を向けるように、八重桜がうつむいて咲いていた。公園には多くの家族連れが来ていて、子供たちが芝生の上を元気に走り回っていた。あの日も、そうだったな... その春... 入退院を繰り返していたM君が、生死の間を彷徨う瀕死…

浜名湖畔にて

おとうさん 昨日遅くに浜名湖に着きました。 日没には間に合いましたが、雲が多くて西の空はほんのり赤みをおびたくらいで夜がきました。 おとうさん それから僕は飲みに行きました。 ずいぶん飲みすぎてしまいました。 だって おとうさんの身に起こったこと…

山桜

滾々と湧きいずる清水の沢に、白い花びらがふたひら落ちていた。桜の花びらにしては小さいようだったが、つけ根の薄紅色は桜のそれだった。あたりを見回してみたが、こんな森の中に桜の木などあろうはずもない。森の外から風に舞ってきたのだろうか... 黒部…

桜の樹の下で...

富山湾から吹き上げてくる風が、チューリップの花をに揺らし 土手に連なる満開の桜を揺らして吹き抜けていった。 桜並木の向こうには、雪を頂いた立山の蒼い山並みがそびえていた。 朝日舟川べり 春の四重奏チューリップ、菜の花、桜…そして立山連峰タイミン…

花園にて

花園に続く細い坂道は、今朝まで降っていた雨にぬかるんでいた。 一歩また一歩と踏みしめながら、胸が高鳴っていった。 このところめっきり減ってしまった関西出張が、 この季節に突然入るなんて、奇跡のようなことだった。 僅かな時間の隙間を縫って、大阪…

道標

紫灰色の雲が、長い水平線の上に厚く横たわっていた。 日の出の時刻を過ぎたのに、あたりはまだ薄暗かった。 海辺はでは、何人かの観光客が日の出を待っていたが 一人になりたくて、その場所から離れた防波堤の上でその時を待った。 やがて雲の上辺が輝きは…

海に沈む夕陽

灯台の建つ丘の上に辿り着いたのは日没の20分前だった。 灰色がかった空に、ほんのり赤みがさしていたが、燈火は未だ灯っていなかった。 閉ざされた門の横にある小さな土産物屋のテラスが額縁のようになって その向こうに海が見えた。 塗装のはげた手すりか…