2016-04-01から1ヶ月間の記事一覧

いのちの輝き

出張から帰った翌朝...カーテンを開けた瞬間、思わず息をのんだ。 小さな庭のフェンスいっぱいに、幾千万の黄檗色(きはだいろ)の花が、 夜明け前の静寂の中で、いっせいに花を開いていたのだ。 それは、手品師の翻した布の下から現れた奇跡のようであった…

普賢象

ふと気がつくと、白いシャツが若草色に染まっていた。 新緑の森には、春の光が溢れていた。 頭上を覆う緑のグラデーションが、さらさらと風に揺れ、 踊る木漏れ日のなかで、染井の名残りの花びらが、ひらひらと閃いては消えていった。 森を抜けた丘の桜の回…

鬼となりて

どこまでも続く満開の桜並木に、雪のようにはらはらと花びらが降っていた。 花を見上げることもなく、堕ちてゆく花びらの軌跡を目で追っていた。 散りゆく花びらは、生と死のはざまに何を想うのだろう... 降り積む花びらの、ちぎれたつけねにさしたの紅がせ…