2015-09-01から1ヶ月間の記事一覧

白洲正子『美は匠にあり』

農家の建物を改造したというその建物には、華美なものはひとつもなかったが 本当の贅沢とはこういうことなのだろうなと思えた。 『武相荘(ぶあいそう)』白洲次郎・正子夫妻が昭和15年からずっと住んでいた家である。 自宅から30分もあれば行ける距離に、こ…

越前竹人形

その街には、木彫と書かれた看板が軒を連ねていた。 どの店も、奥で職人が巨大な楠の塊に鑿を当てて槌をふるい 100本ほど並べた彫刻刀から1本1本を選んでは細かな彫刻をほどこしていた。 富山に井波という彫刻の街があることを知ったのは、 入善の料理旅館に…

苦悩を突き抜けて...

おそろしく長い純白のドレス...バタ・デ・コーラを引きずったバイラオーラ(ダンサー)が苦悶とも恍惚ともつかぬ表情で舞っていた。呻くようなカンテ(歌)...激しいパルマ(手拍子)とサパテアード(靴音)生きることの苦しみと歓びが、舞台の上で激しく交…

灰色の世界

薄墨を流したような空がどこまでもひろがっていた。 黒姫高原のスキー場には、ゲレンデを覆い尽くすほどのコスモスが咲いていた。 北陸のわずかな陽射しを求め、伸び上がるように咲いたコスモスは、 静かな眼差しで、その灰色の空を見上げていた。 なんと優…

語りかける花

あの空の透きとおった水浅黄は、何を反映しているのだろう。空の奥に水浅黄の光源でもあるのか、それとも深い井戸でもあって無限に水浅黄を流しているのだろうか。 海はその水浅黄を映して、底深い器にため、青藍を深々と湛えている。いずれも水や水蒸気とい…

いのちの色

最初の衣の前に立ったとき、背筋に電流が走り、全身が泡立っていった。 想像を絶する美しさに、神経が錯乱したのか... 一瞬止まっていた呼吸から、深いため息が漏れた。 いままで観てきた、どんな名画よりも深いため息だった。 それから後は、ただ夢の中を歩…