帰宅していつものように書斎に入ると、机の上に封書が...
手書きの手紙なんて珍しいので、いったい誰だろうと思い裏を見て驚いた!
我が愛する大作家、宮本輝先生からのお手紙だったからである。
二年前に、大阪のリーガロイヤルホテルで、トークショーが開かれた。
当時単身赴任していた三重から電車に乗って大阪の会場に向かった。
20年以上、敬愛し続けた宮本先生ご本人に会えるというだけで夢心地だった。
自らの思いを手紙に書き、大阪でちょっといいワインを買って、受付に託した。
思いが通じたのか、ムイカリエンテの席は、ステージ正面の一番前の円卓だった。
手の届きそうな場所に、その姿を認めただけで涙が溢れた。
思ったとおりのお姿、思ったとおりの声...思ったとおりの笑顔だった。
あっという間に時間が過ぎた。
半年後に御礼のお葉書をいただいた。
...が、そのことはご記憶になかったらしく
二年前の手紙とワインに対する御礼の言葉がしたためられていた。
宮本輝用箋という原稿用紙に、万年筆でしたためられたお手紙。
最近、少々自信をなくしていた...という、そのときに
漢和辞典の間から魔法のようにぽとりと落ちたムイカリエンテの手紙
ご謙遜とは思うが、その手紙で先生が何かを感じてくださったとしたら..
読者としては、この上ない幸福である。
しかも、ムイカリエンテが、年頭から自らの宿命に打ちひしがれて、
やっと決まった就職先で、いきなり会社の不正行為を知ってしまい、再び苦しんでいるこのときに...
先生の人間性、あふれる才能とは比べ物にならない小さな人間が書いたファンレター
そんな手紙が二年の時を経て現れるとは...
mixiで、たまたまトークショーがあることを知り、三重の現場から駆けつけた。
20歳のころから、宮本文学に感銘し、出版される本はすべて読んで人生の糧にしてきた。
この日記でもたびたび引用させていただいている。
二年前の手紙には、自分がいかに宮本文学を愛し、自らの生きるよすがにしているかということを
精一杯の熱意をこめて綴ったものだった。
守られているのだ。本当に目に見えぬ大きなものに、守られている。
そんな感謝の念が、心の深いところから湧き上がって、
言葉にならぬほどの歓びに包まれている。
先生、ありがとうございました。