茜に染まる

心臓の手術を受けた友の見舞いに行った帰り道
畑のなかに立つ、一本の白木蓮に出会った。



ふわっと開いたやわらかな花びらは
色づきはじめた夕方の陽射しをあびて、儚げに空を見上げていた。
やがて萎れゆく短いいのちを知ってか知らずか
天を見上げて、一心に祈る純白の乙女らの
なんと神々しい姿...


春の風に揺れるその花びらを見ているうちに
冬の寒さに縮んでしまった胸のなかの塊が、開いていくような気がした。

白いベッドに横たわる友の、青白い頬にも
この夕陽が射しているだろうか...
この空を見ているだろうか...
早く元気になれますように...
希望を取り戻せますように...
白い花の下で祈るうちに、花は茜色に染まっていった。






ふと振り返ると、夕陽の先にはひめこぶしの花
薄紅色の花が、沈みゆく夕陽の中で燃え始めた。