二人の先輩と...

3月15日 大五郎さん
地下鉄の伏見駅で大五郎さんと落ち合った。
63歳になるというのに、相変わらずカッコいいオジサンだ。
今週は豊田で講習...とFacebookに書き込んだら
半田からわざわざ名古屋まで会いに来てくれた。
このまえ半田で飲んだばかりなのだが...嬉しいことだ。


30代のときに仕事の関係で出会って20年余...最初は、秋田の展示会だった...
もちろん仕事上のお付き合いもさせてもらったし
一緒になって新規開発した装置を、酒造メーカーに納入させてもらった。
(彼の経営する会社は、醸造...酒造・醤油・味醂等の工場に機械や道具などを納入する会社)
しかし、仕事以外でお世話になったこと...影響を受けたことのほうが
はるかに大きいのだ。


半田にずっと宿泊していたので、夜は毎日のように飲みに連れていってもらった。
半田は魚が美味しいし、ちょっと洒落た店も多い。
醸造関係の仕事をされていて、味覚・嗅覚が抜群な大五郎さんと一緒に行ったお店は
料理も酒も素晴らしく美味しくて、当時の自分にとっては、感動の連続であった。
男女問わず友だちがものすごく多くて、年下の女性からも「大ちゃん」と呼ばれて慕われている。
ファッションのセンスも良くて、いい匂いがする。
(いまだに、自分が使っているコロンは、当時彼がつけていたCHANEL ALLURE)
仕事のイメージとのギャップもまたいい。
こんなカッコいいオヤジになりたい... そう思っていた。
イカリエンテの発想も、大五郎さんとの出会いに端を発しているのは間違えない。


当時の会社をリストラになって、半田に行くこともなくなってしまったこともあり
10年ほどはほとんど交流もなかったのだが、別のきっかけでこうしてまたお付き合いできることが
本当に嬉しい。


去年は、東京でのライブにも二度ほどお邪魔し、半田でも一緒に飲みに行った。
名古屋でもずいぶん遊び歩いたものだが、今回は何年ぶりかな...
「の甚」という焼き鳥屋で、美味い焼き鳥をつまんでから、
以前何度か行った、大五郎さんのお友達が営むイタリアン「サンセット」へ...
考えてみれば、偶然のような出会いから20年...
住んでいる場所も遠く、仕事も趣味もちがっているのに、
こうして、並んで酒が飲めるなんて、思ってもみなかったことだ。
ひとえに大五郎さんの人間の広さかな...と思う。


またお会いしましょう...とは言わないけれど、また会える。
そう思いながら名鉄の地下ホームで手を振って別れた。

                                            1. +

3月19日 Sさん
Sさんから、突然「一杯やろう!」と、メッセンジャーが来た。

Sさんは、高校時代の剣道部のOB、3歳年長の先輩である。
OBの中でもひときわ恐れられていた「ジョーカー5人衆」の一人。
ジョーカーの先輩が稽古に来ると、現役メンバーは一気にブルーになった。
今日はしごかれる...
剣道のかかり稽古というのは、元立ちが「よし」というまで延々と打ち込み続けなければならない。
夏休みの稽古などは、毎日のように小便に血が混じって真っ黒になったものだ。


Sさんは、高校時代に国体に出場、大学は当時日本一だった法政大学に進まれた。
剣道着を着た姿はとても凛々しく、武士の風格があった。
剣を構えた姿も動きもすべてが美しく、そして強かった。
他の先輩のように冗談も言わないし、笑わないので、まさに近寄りがたいOBだった。


剣道部引退後は、まったくお付き合いもなかったし、二度とお会いすることはないと思っていた。
しかし...10年ほど前に、高校の何かの行事で20年ぶりにお顔を拝見し、声をかけた。
それから数年後、2011年 Facebookを始めたら、Sさんの顔が出てきたので、友だち申請をさせていただいた。
会社を経営しておられるが、自分の仕事とは接点もなく、よくわからない内容だったし
高校時代の、厳粛な先輩後輩関係が残っているので、こちらから気軽に声をかける気にもなれず
たまにアップされる書き込みを、なんとなく読んでいるだけの関係だった。
なので...飲みに誘われるというのが、不思議なことのように思えた。
もちろん、大先輩からお誘いを受けて断るわけがない。
5日後に横浜駅の近くの居酒屋でお会いすることになった。


Sさんは、高校時代には見たこともなかった満面の笑みで現れた。
乾杯してから第一声「病気の方は大丈夫なのか?」と聴かれた。
ああ、見ていてくださったのだな...と思った。
最近は、病気の事はFBにもブログにも書いていないし..
ずっと気にして、見ていなければ知らないことだ。
高校時代は、神様のように思っていた人なだけに、ありがたいことだと思って、感動した。


ジョーカーの件を話したら、少し傷ついていたようだったが...
それからは、ご自分の仕事のこと、こちらの仕事のことなどいろいろ話した。
数年前に頼まれて、母校の剣道の練習に行ったときに後頭部から倒れて意識をなくされ
首から下が動かなくなるという恐怖も味わわれたことなども...
海外の製品を輸入して日本で展開している会社なので、海外出張もされながら
社長として奮闘されている。


二軒目はバーで飲みなおして、横浜駅で別れた。
Sさんとの縁も不思議としか思えない。
神様的な感覚はすぐには拭えないけれど..
あ... 酔っぱらって、馴れ馴れしい態度をとってしまったかも..
これからまたお付き合いさせていただけたら嬉しいな。

                                              1. +


「命の力には、外的偶然を、やがて内的必然と観ずる能力が備わっているものだ」

と、小林秀雄は言った。
これは、その人が持つ様々な宿命に対して言うのだろうが
やはり人間関係において、もっとも当てはまるような気がする。


そもそも、人が出会う確率自体がとんでもなく低いわけで
その中で、何年何十年とお付き合いできること自体が奇跡のようなものである。
偶然の出会いを必然として行きたいし、相手に対しても必然になるような自分でありたい。


そんなことを感じた一週間... しあわせな一週間