こもり柿

富山市内は、朝から予報通りの大雪になった。
レンタカーを借りて、北陸道で魚津へ...
除雪車がまだ通っていない路面は、いたるところで路面が凍結し
自損事故でへこんだ車が何台も停まっていた。

午前中1件 午後一で1件の打ち合わせ。
合間の時間に隣の滑川の旧宮崎酒造へ...
現在、北日本新聞で連載されている宮本輝氏の小説の舞台が
このあたりらしく...小説の舞台見学ツアーでここもコースに入っていたらしい
まだどんな小説かさえ知らないのだが
これまで舞台となった場所にはずいぶん行ったので、
今回も街の雰囲気を見ておこうと...

2時前には打ち合わせ終了
そのまま帰ってもよいのだが...
折角の雪景色を満喫していっちゃおうか
観光地図を広げると、白川郷が視界に入る。ナビで調べると、高速で1時間...
行ったことないし... 『森のなかの海』の舞台のひとつ高山に近いし...
ということで寄り道をすることに
(2011年に、『森のなかの海』のもう一つの舞台を観に、
 熊野から吉野までの山道を走った→ http://d.hatena.ne.jp/mui_caliente/20110615


高岡を過ぎると、あれだけひどかった吹雪はおさまり
白川郷に着くころには、すっかり青空が見えてきた。
そこは観光ポスターで見るよりもずっと広く、合掌造りの家が軒を連ねていた。
目抜き通りの道は舗装され、なんだか観光地慣れしているというか
あまり感動もなく...


しかし、そこに一本の柿の木になぜか惹かれる。
秋に熟したはずの実が、そのまま木にぶらさがっている。
雪国では、この光景をよく見かけるのだが
近くで見たのは初めてのこと。
背景の山のモノクロームな冷たい風景の中で柿の温かい色が映える。

FBに写真を載せたところ、Iさんから"こもり柿"というのだと教えていただいた。
木を守るとか、来年の実りへの祈りだとか、冬の間お腹をすかせた鳥のためとか...
生命への畏敬と感謝がこもった、いい言葉だな

映画のセットのような街をぐるっと回って、
高台に昇って、全体を見下ろす...遠くから観た方がいい

高速で帰る途中、五箇山の合掌造りにも寄ってみる。
こちらは白川郷のような平地ではなく、山の上の斜面に立ち並んでいる。
白川郷と違って、観光客も一人もいなくて
道路以外は雪かきもされず、家が雪に埋もれている。
こっちの方がいいな...




再び降り始めた雪の中を一人で歩きまわり、
陽が落ちる前に帰途についた。