夏の名残火

地中に残った夏の熱気が
野辺のいたるところから
噴き出していた。


過ぎゆく夏...
かなわぬ夢...
届かぬ想い...
冷めやらぬ情熱にもだえるように、
身をよじらせ、身を反らせ...
真紅の花弁を開く 悲願の花


苦悶にみちたその姿
しかし...
その胸よりいでしのびやかなる蕊は迷いなく
祈るごとくに天を向いて伸びあがる。


日々の悪戦苦闘に身をよじろうとも
心はこの蕊のごとく枉げることなく伸びやかに
天を向いていなければ...




いざ歌へ、絶間なき戦ひに
疲れはて、節々の痛む時、
いと苦き悲しみの迫る時、
汝が子の死ぬばかり病める時、
母に似し物乞ひを見たる時、
汝が恋につくづくと倦める時、
物いはぬ空を見て。
いざ歌へ、その時ばかり、
あはれ、我が飢えたるものよ。
       啄木


畑の傍らに咲いていた雪のような花...
白い小さな花が無数に、咲いている。
ひとつひとつが幸福であったらいいのに...
と思った瞬間に、幾人もの友の顔が浮かぶ
悩める友に、闘う友に...
幸福がこの花のように降り注ぎますように...