久しぶりの名古屋は快晴だった。
白亜のツインタワーの上空を
同じ色の雲が流れていく
なんと蒼空の似合うビルだろう。
蒼空に映えるこの駅ビルが開業したのは
ムイカリエンテ38歳の誕生日1999年12月20日
名古屋では、初めてできた超高層ビル...
今でも数えるほどしかないので、
数十kmの距離からでもよく見える。
そして、最上階のラウンジからの夜景は見事だ
通勤駅以外では最も乗り降りをしてきた駅
年に数十回...多かった時は100回以上...700回くらいは来ているのかな...
思い出も数えきれないな
多くの人たちと、一緒に訪れ...ここで出会い...ここで別れた...
その時はまた逢えると思っていても、後で気がつけば殆どがもう逢えないのだろうな
ちぎれて消えていく雲を見上げながら
幾人かの顔を、蒼い空間に想い描いてみた
『蒼穹の昴』
- 作者: 浅田次郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/10/15
- メディア: 文庫
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激動の時代のなかで、天を見上げて闘った青年たちの物語
宦官として、官僚として、政治家として、革命家として...
生命を燃やして生きる青年の姿が美しい。
実在の人物たちのなかに架空の人物を星のように配しながら
歴史をいきいきと蘇らせ、人生の大事をつきつける。
惟うに一国の善治を成すにあたりては俗儒の論を語らず、
すべからく心に基き命に則り、敬を貫き、庶事万民の利を計るを以てすべし。
天下百姓の安寧なくして何ぞ四百余邦の永泰あらんや。
九職相議して朝に一令を発すといえども、社稷の誹りを得べくんば忽ち夕べに一制を改む。
けだし政事は柔にして和すること、剛にして毅なるに優れる也
架空の人物の言動はつまり、作者浅田次郎氏の希いなのだな...
かつて王宮に仕えた占師の老婆 白太太<パイタイタイ>が
主人公の一人、梁文秀<リャンウエンシュウ>には皇帝に仕える身となることを告げ
「汝は学問を琢き知を博め、もって帝を扶翼し奉る重き宿命を負うておる。
よいか、文秀。困難な一生じゃぞ、心して矜り高く生きよ」と諭す。
一方、文秀の義弟である糞拾いの少年 李春雲<リイチュンユン>(春児チュンル)には、
「汝の守護星は胡の星、昴...
幼き糞拾いの子、小李よ。
汝は必ずや、あまねく天下の財宝を手中に収むるであろう...」
と告げる。
文秀は科挙の最高位の試験を奇跡的に合格し進士として、予言どおりの道を進み
春雲は、自ら浄身して宦官となり、様々な苦難を超えて西太后の側近になっていく。
しかし、白太太の春雲に対する予言は嘘であった。
老婆が春雲の将来に見たものは、凍てついた大地に兄弟もろとも飢え死にする姿だった。
父や兄に死なれても、糞拾いをしながら健気に生きる少年に本当のことが言えなかった。
「挙人は上天に通じ、進士は日月をも動かすと言う。
だが挙人や進士にすらそのような力のないことは、他ならぬおぬしが良くわかっているであろう。
それでも、わしは信じたいのじゃよ。
この世の中には本当に、日月星辰を動かす人間のいることを。
自らの運命を自らの手で拓き、あらゆる艱難に打ち克ち、風雪によく耐え、
天意なくして幸福を掴みとる者がいることをな。」
春児のいじらしい笑顔が思い浮かぶと、文秀の胸は熱くなった。
「春児には、あいつにはそれができるのか」
白太太は夢見るように空を仰いだ。
「できると信じよう。少なくともあやつは、黄金の寝台に眠る阿哥よりもかわゆい。
そのかわゆさが、必ずや星をも動かす。のう史了(文秀)そう信じようではないか」
浅田次郎『蒼穹の昴』2
運命を受け入れること...
運命に抗うこと...
民のために命を投げ出すこと...
主君に仕えること...
師に随うこと...
悪と闘うこと...
あまりにも多くのことが胸に刺さり
幾度涙を落としたことか...
そして再び頭上の蒼い空を見上げてみたけれど
覚悟の決まらぬいのちには、昴はどうしても映らなかった。