コスモスの影には...

最後の一週間...
出張もなく、残務整理で終わる。
帰りも早く読書が進む。


北海道の友人Uさんが
誕生日の時に紹介してくれた一冊
『コスモスの影にはいつも誰かが隠れている』藤原新也
コスモスの影にはいつも誰かが隠れている (河出文庫)
フリーペーパーに連載されていたという短編集はどの作品も
殺伐とした都会で暮らす人たちの生活の中に、潤いをもたらすような...
沈んでいた心が、ふわっと軽くなるような物語である。
Uさんが教えてくれた、あとがきの一文が心に沁みる。

人間の一生はたくさんの哀しみや苦しみに彩られながらも、
その哀しみや苦しみの彩によって人間は救われ癒されるのだという、
私の生きることへの想いや信念がおのずと滲み出ているように思う。
哀しみもまた豊かさなのである。
なぜならそこにはみずからの心を犠牲にした他者への限りない想いが存在するからだ。
そしてまたそれは人の中に必ずなくてはならぬ聖火だからだ。

Uさんとは、K大学の後援会で知り合ったのだが
初めてお会いしたときから、なんとなく通じるものを感じた。
彼は、まさに哀しみを人間としての豊かさに変換してきた人だ。
めったにお会いできないのだが、心にしみいるような彼の笑顔を見るだけで
なみだが出そうになる。
年に1回か2回ほどしか会えるチャンスがないのだが、大事な友人だ。


もう一冊...『女優X−伊沢蘭奢の生涯』夏樹静子
Facebookで友人になったIさんからの戴きもの(写真は一緒に送っていただいた名薬「一等丸」)
女優X―伊沢蘭奢の生涯 (文春文庫)
Iさんは、島根県津和野に300余年続く「高津屋伊藤博石堂」の九代目伊藤利兵衛を受け継がれた。
伊沢蘭奢は、津和野で紙を作っていた三浦家に生まれ、この高津屋に嫁いだ。
一子をもうけるが、子供を津和野に預け新薬の開発にたずさわていた夫とともに東京で暮らすうち
新劇の世界に憧れ、女優になりたいと思うようになる。
津和野に戻るが、子育てをさせてもらえず家の奥で針仕事ばかりしているうちに決心して家を飛び出す。
そして東京に出て劇団に入り、女優となる。
当時、一世を風靡していた松井須磨子が亡くなった後、一気に頭角を現し、日本の新劇界を支えて活躍した。
大正ロマンと言われた時代、家も子も捨てて自由に生きた女性...
しかし、故郷に残してきたわが子に対する思いは抑えがたく、
中学生になった子供からの手紙をきっかけに再会を果たす。...が、その直後37歳にして脳出血で亡くなってしまう。
夏樹静子は、蘭奢の葛藤と闘いを見事な文章で書きあげていくが、
最終章の母と子の交流の場面がもっとも感動的である。


読書以外に、最近はまっているもの...デッサン
ふと思いついて、高校生時代に美術で教わった手法を思い出しながら、自分の顔を描いてみた。
Facebookには、何度もアップして見飽きられているが、FBをやられていない読者の方に
見ていただくように、ここに貼っておきます。