失業手当の支給が終わった。
延長期間を含めて230日...
仕事を見つけることも
できないまま
最後の手続きを終えて
職安を後にする。
これで収入は完全に途絶えた。
ひとつ手前の駅で降りて図書館へ...先日借りた本を返却。
返す前に、山村暮鳥の詩を手帳に書き写した。
手 山村暮鳥
しつかりと
にぎつていた手を
ひらいてみた
ひらいてみたが
なんにも
なかつた
しつかりと
にぎらせたのも
さびしさである
それをまた
ひらかせたのも
さびしさである
自分は、どんなときに手をにぎりしめていただろう...
思い返してみれば、この詩の哀しみが沁みてくる。
歩いて帰る途中、突然大粒の雨が降り出すが...傘がない。
瞬く間に全身が濡れていく。
自分という人間の不甲斐なさ..世間に身の置き所のない寂しさ...
抑えてきたものが封印を破って、胸の中に毒のように広がる。
雨の中を歩いていくと、黄菖蒲の花が咲いていた。
一年前、ここを通った時にも咲いていたな...
哀しみにひたっている時ではない
あの黄菖蒲のように、雨の中でも毅然と咲かねば...
今日 春醒めぬ 門口に
汝 面(おも)包み 萎えし生命に
彼をな欺きそ
今日 心臓(むね)の花弁(はな)開け
今日 自他の隔て忘れよ
この歌 谺(こだま)する虚空(そら)に
汝の香 浪立たしめよ
外(と)の方の世に 行く末知らず
甘露を あまた撒き散らせ
タゴール『ギーターンジャリ』55段 渡辺照宏訳