『花の回廊』

流転の海 第5部 花の回廊
宮本輝の最新作『花の回廊』を読んでいる。
宮本輝氏が、父を描いた長編小説
『流転の海』シリーズの第五部になる。
第一部を出版してから既に23年。
イカリエンテが最も尊敬する作家のライフワークであり
自分が主人公の人生に寄り添って生きている感さえ持つ小説である。
戦前戦後の動乱からいくつもの事業を起こし、浮沈を繰り返す主人公松坂熊吾
『花の回廊』では、一文なしになり電気もガスもない空きビルで生活するところから始まる。
一人息子の伸仁は、貧しい人々が暮らす迷路のようなアパートに住む親戚に預けられる。

人は歩みの途上で奇妙な回廊をさまよう。
なかは暗く、危険な匂いに満ちている。
そして足元で咲き乱れる花に気づくものはいない。
(表紙の帯より)

殆どが事実に基づいた小説であると聞いている。
どんな苦難の中でも、まっすぐに生命を燃やして生きる熊吾の生き方に触れると
自分の苦悩など小さなものに思えるし、まだまだ闘えるという闘志がわいてくる。
回廊のような先の見えない人生の中でも、
足元には花が咲き乱れているということに気がつくだけの生命の強さや気高さが
なければならないのだと思いながら、文章を噛みしめるように読んでいく。

                                                                          1. +

今週も降りかかる火の粉を払いながら闘ってきた。
夕方、友人と会う約束があったので、早めに切り上げてレンタカーを返しに伊勢市へ...
先日迷い込んだ「緑の迷路」の中で呼吸がしたくなって
剣峠を越えて、南伊勢町から伊勢への山道を走る。

別世界に入りこんだような緑の空間。道幅のひろいところに何度か車を停めて歩いてみる。
雨上がりの山には、なんともいえない緑の香りが漂っている。
川のせせらぎ以外に音といくものが全くない静寂。生命が洗われていく。


胸の中に溜まった汚れた呼気を吐き出してから、山を降りていった。

※ GooglePicasaでアルバムをアップしました。
  写真もご覧ください。
  http://picasaweb.google.co.jp/muycaliente.ueno