沖縄の心

Aさんは沖縄人
大学時代にアルバイトをしていた小さな町工場で
ひと夏一緒に働いただけの縁であるが
何故か今日まで年賀状のやり取りは続いている。
数年横浜で暮らし、すぐに沖縄に戻って
今は保育園を経営しながら電気工事の会社もやっている。
今日はお嬢様の受験に付き添って、東京に一泊で来るということで
会いたいとの電話をもらい渋谷で待ち合わせ。
長いこと鳥羽にこもっていたせいで
渋谷の人混みの中を歩くのは酷く疲れる。
Aさんとは10年ぶりの再会になるが、
すっかりオジサンになっていた。
近くの居酒屋で酒を飲みながら
昔の思い出や現在の生活について語り合う。
会話の端々に、沖縄人気質があふれている。
写真で見た海のように澄み切った純粋な心を持っている。
そして、戦争に対する思いはやはり生々しい
イカリエンテの世代は、子供の頃まだ沖縄はアメリカだった。
Aさんも同い年だからその記憶は鮮明に残っている。
少年時代に頭上を爆撃機ベトナムに向けて飛んでいくのを
数え切れないくらい見てきたという。
戦争の悪を観念でしか理解できていないムイカリエンテから見ると
祖父母や親戚を戦争で亡くしているAさんの思いには
言葉がなかった。
ビールと泡盛を飲んでへろへろになって電車を乗り過ごし
乗った終バスで、近所に住む元有名ロックバンドのKさんに3年ぶりに会う。