『かわいい論』について追記

「かわいい」論 (ちくま新書)

「かわいい」論 (ちくま新書)

著者はアウシュビッツを訪れた際に見た光景で
「かわいい」に対する認識を大きく変えたという。
強制収容所の壁に描かれた かわいい猫の絵がそれである。
実際にそこに連行されてガス室に送られるユダヤ人を
収容するその部屋に、芸術の国ドイツ人が描いたのは
そこで行われている人間の狂気を覆い隠すような
可愛らしい壁画であった。
いまの社会には、「かわいい」もの「楽しい」ことで
あふれかえっている。
偉大さのない上辺の快楽に人は酔いしれる。
しかし、それは本質から目をそらせるための隠れ蓑かもしれない。
最近テレビコマーシャルで盛んに流れる
金融会社のコマーシャル。
判で押したように同じトーンで、「かわいい」アイドルや犬を使い
可愛らしさ、優しさを連想させるようなイメージを
振りまいている。
しかし、実際はどうだろうか?
銀行などでは考えられないような金利を貪り
安易に貸しておいて、返せない人には恐ろしい結末が待っている。
「かわいい」ものが人の心を和ませるのはいいことだが
それを悪用して、爪を隠す輩がいることも忘れてはならない。