沖縄の友人

沖縄のA君から久しぶりに電話があった。
30年前、大学生のときに学費を稼ぐために
夏休みに通った町工場。
毎日埃と鉄粉と接着剤まみれになって
おじさんたちと一緒に働いた。
そこに入ってきたのがA君だった。
沖縄から上京し、この工場で働きながら
夜、専門学校に通っていた。
人懐こい人柄にひかれ、いつの間にか仲良くなり
工場の近くにあった彼のアパートに寄ったり
イカリエンテの実家に来てもらったりしていた。
A君は、専門学校を卒業して電気工事士の資格を取ると沖縄に帰って就職した。
それ以来会う機会もなく年月が流れ、年賀状だけのお付き合いだけになった。
2006年、仕事で東京に来たA君と久しぶりの再会
翌年3月にはお嬢様が東京の大学に入学されるということで上京し彼のご家族ともお会いした。


A君とは新橋駅で待ち合わせた。
安い居酒屋がいいということで、西口商店街の「天狗」へ..
最近「ツール・ド・おきなわ」を通じて知り合った友人も来るとのこと
同年代のオジサンが合流して4人での飲み会となる。
Tさん(47)は、大手自動車メーカーの技術者、Yさん(55)は、教会の牧師
A君以外は、お互いに初対面。
しかし、A君の明るくおおらかな人柄を中心にすると、皆旧知の友人のように
打ち解けてしまう。
学生時代50kgだった体重も88kgまで肥えて
外見は、すっかりオジサンになってしまったが
笑顔が子供のように無邪気で可愛らしい。
沖縄の海のように純粋でおおらかな人柄には魅力を感じる。


Tさんの仕事の話題になり、なんとなく嫌だなと思っていたら
案の定、Tさんに、仕事は?と聞かれ、失業中と答える。
場が一瞬しらける。Tさんの顔が曇る。
いつもこうだ... 自然な会話が一瞬凍りつく。
周囲まで嫌な気持ちにさせ、気を遣わせてしまう。
しかたない。自分が駄目なのだから...


すっかり飲み過ぎてしまい、
A君が泊まるという上野のカプセルホテルに予約を入れて一緒に泊まる。
翌朝、A君はお嬢様と東京駅で待ち合わせてディズニーランドに行くというので
先にカプセルを出る。
隣のカプセルから顔を出したA君が「頑張ってね」と一言...温かい。


早朝の上野の街は汚くて、悲しい気持ちで駅までとぼとぼ歩いた。