負けない...

辻井伸行という盲目の青年が
バン・クライバーン国際ピアノコンクールで
優勝を果たし、感動の渦を巻き起こした。
大きな障害にもかかわらず
自身との闘いに見事打ち克った者への
共感と賞賛の喝采であった。
You Tubeでも、彼の演奏する姿を繰り返し見た。
楽譜も鍵盤も見ない代わりに、自身の内側を見つめながら
生命をふりしぼるようにして全身で奏でている姿だった。

見る人にとって、どれほどの勇気と希望をもたらしたことか...
それぞれの苦闘それぞれの障害...
負けそうになる自分を支えるのは、それを克服した人間の姿である。

彼(ベートーヴェン)自身その苦しみの唯中にあって希念したことは、
彼自身の実例が他の多くの不幸な人々を支える力となるようにということであり、
「また、人は、自分と同じく不幸な一人の人間が、自然のあらゆる障害にもかかわらず、
 人間という名に値する一個の人間となるために全力を尽くしたということを識って慰めを感じるがいい」
ということであった。
超人的な奮闘と努力との歳月の後についに苦悩を克服し天職を...
その天職とは彼自身の言葉によれば、憐れな人類に幾らかの勇気を吹き込むことであったが...
天職を完うすることができないときに、この捷利者のプロメテは、神に哀願している一人の友に向かって
「人間よ、君自身を救え!」と答えたのであった。
                      ロマン・ロランベートーヴェンの生涯』

良く生きようとすればするほど、高みに登ろうとすればするほど
人は自身の無力さを痛感し苦悩する。しかし、そこからが闘いの始まりなのだ
嘆き悲しんで言い訳をするのは誰にでもでる。今の自分もそうではないか...
「人間という名に値する一個の人間」になるために...闘いを起こさねばなるまい。