不思議な縁

朝から重い雲が空を覆い、重く湿った風が吹いている。
雨が降り出す直前の、この風が好きである。
ルーツは百姓だからかな?


朝の通勤電車...
「幸福は忍耐の大地の上に咲く花」
新聞の一行に胸が熱くなる。
そして早朝に入っていた前日のヤスコさんのコメント...
「ずっと晴れだと、その(太陽の)輝きに気がつかない」
忍耐 忍耐... 満員電車に乗っている周囲の人たちも、何かに耐えながら生きている...


仕事帰りに後輩M君と1年ぶりに再会。
日本橋DICビル裏の「三州屋」に入る。銀座「三州屋」と暖簾の内装も似ているがメニューが違う
海老フライを期待していたのだが、ちょっとがっかりして、そのまま写真を撮り忘れ...


M君との付き合いは10年余。ムイカリエンテのいた職場に、彼が新卒で入社してきた。
仕事も一緒にしたが、それよりも二人で調理クラブを結成して、
会社の食堂で、毎日ランチを作っていたのが懐かしい思い出である。
11歳の歳の差があるが、彼が大人なので精神年齢的にはちょうどよく、お互い会社を辞めても
付き合いが続いてきたのかもしれない。


彼が会社を辞めるとき、彼の担当していた千葉のC社をムイカリエンテが引き継いだ。
C社がある新技術の実験をやることになり、千葉の現場に通っているときに
現場をたまたま見にきたE社のSさんと名刺交換をし...ムイカリエンテが会社を辞めたとき
このSさんの誘いでともに大阪のベンチャー企業に入社した。
この会社を辞めて昨年勤めた会社の同じ部署に、Sさんと同じ会社だったCさんがいて
この人が長年付き合ってきた業者は、タッキーともつながっていた。
そして、今日後輩M君と会う数時間前に、一年ぶりくらいにC社の社長から電話があった。
思い出をたどっていくと、人は不思議としか言いようのないところで繋がり影響しあっている。


会社を辞めてからは、お互い全く違う仕事をしてきた。
彼は非常に優秀な人材であるが、仕事では苦労に苦労を重ねてきた。
先輩としてアドバイスできることも一つもなく...
ただ頑張ってほしいと、それだけ思いながら日本橋の駅で別れた。


帰りの電車で山本周五郎の『やぶからし』を読んで改めて感動し、
帰宅して山本周五郎箴言集『泣き言はいわない』をぱらぱらとめくる。

この世に生きていくには、苦しいこと悲しい辛いことを耐え忍ばねばければならない。
たいていの者が身に余る苦労を負って、それこそ歯を食いしばるような思いで
その日その日を暮らしているのである。しかも他人にはその苦労がわからない。
人間はみなめいめいの悲しみや辛さのなかで、独りでじっと辛抱しているのである。
                           山本周五郎『湯治』

「人間は生まれてきてなにごとかをし、そして死んでゆく、だがその人間のしたこと、
しようと心がけたことは残る、いま眼に見えることだけで善悪を判断してはいけない、
辛抱だ、辛抱することだ、人間のしなければいけないことは辛抱だけだ。
                           山本周五郎『ながい坂』


貧しい人、弱い人のために小説を書き続けた山本周五郎の言葉は胸に沁みこんでいく。


頑張らなければ。