木に学べ!

木に学べ―法隆寺・薬師寺の美 (小学館文庫)
イカリエンテの部屋は、机も本棚も自作品
ホームセンターの安い材料を自分で切ったり繋いだりして組み立て、5年近く使っている。
ただ、収納性が悪いので、なんとかしたいなぁと思い立って、
近所に出来たIKEAというお店に行ってみる。
期待はしていなかったものの、なんだか組み立てキットのような軽薄な家具ばかり...
これなら自作のほうがまだましかな?
仲町台駅のオープンテラスのカフェに寄り道。アイスコーヒーを飲みながら、気持ちよく読書。
先日買った「木に学べ」
宮大工の棟梁にインタビューする形で書かれた口語体の文章。
昨日のゴルフ場で感じたことに通じる部分も...

自然を忘れて自然を犠牲にしたらおしまいでっせ。
自動車売ってもうけた金を、農山林業にかえさんと、自然がなくなってしまいます。
・・・・
千年たった木は千年以上の競争に勝ち抜いた木です。
いちがいには言えませんけど、50メートルの木の高さやったら、
50メートルまで根が入り込んでいるといわれています。
枝が幹から10メートル横に伸びたら、根も横に10メートル根を張っていると言われます。
千年も二千年も木が育つには、土壌の方にも条件があります。
まず腐植土がなきゃあきまへんな。...地下水はできるだけ低い下の方を流れているほうがいい。
(地下水が浅いと)50年くらいで上のほうから腐ってきます。
二千年以上のヒノキが残っている台湾の山は厳しい条件のところです。
あそこのヒノキの植わっている山には土壌なんてありませんのや。岩ばっかりです。
ほんのわずかな水を目指してヒノキの根が岩の間に入っていくんです。
こういう条件だからこそ、二千年もの木が育つんですな。人間も同じですな。
甘やかして欲しい物がすぐに手に入ったんじゃ、いいもんにはなりませんな。
木というのは人間に似ています。

千年の木で作った建物は千年持つという。
飛鳥時代の工人の知恵について語られていくが、それはまた後日...
千年以上の間、地震で倒れた五重塔は一つもないという。
木がしなるように、柔らかに振動を吸収する構造
あれだけの建築物を、機能的に耐久性を持たせて、しかも美しく作り上げた人間の技。
それは人間の情熱以外の何ものでもない。
装飾だけに力を入れて、構造を軽視したという日光東照宮は"芸者"のようだと徹底して批判する。

釘や道具に使われる鉄の質も、溶鉱炉ができて効率化された後のものは
格段に品質が落ちてしまったという。
本当にいい材料は、法隆寺の古釘を刀鍛冶に鍛えさせて作る。
文明の発展は、何事も効率的で便利にしたが、その生命力は脆弱になってしまった。

先日、東京ミッドタウンなるものを見てきたが、建物には何の感動もない。
この建物は、千年どころか百年先には陳腐な汚い建物になっているだろう。
否、既に取り壊されているかもしれない。
五重塔で生活するわけにはいかないが、せめてもう少し自然との共存を意識していかなければ
やがて、砂漠のような風景になっていくことは、確実なようだ。