ファウスト

ファウスト 悲劇第一部 (中公文庫)

ファウスト 悲劇第一部 (中公文庫)

学生時代に読んだゲーテの『ファウスト』を
本棚から引っ張り出して読み返す。
20年も前に引いた傍線がなつかしくよみがえる。
 

呑気に安楽椅子に寝そべるようになったら
おれはおしまいだ。
うかうかと甘い言葉に乗せられて、
ぬくぬくとおれがいい気になって収まりかえるなら、
そして、欺されて快楽の夢に酔いしれるなら、
もうおれの最後の日だといっていい

おれもちいさくかたまって、幸福になろうなどと思っていない。
戦慄は人間の最も深い精神の部分だ
いくら世間が戦慄を忘れさせ、人間を無感動な生きものにしようとも
戦慄に打たれた人間でこそ、とほうもないものを深く感じることができるのだ

会社で三重の責任者をしていた方が退職し、その代理を勤めながら
これまでの仕事もこなしている。
仕事がさらに2倍も増えて、体も頭もへとへとである。
技術的な思考、人の管理と調和、組織の発展...
客先の担当者との交渉 社内の交渉
考えなければならないこと、動かなければならないこと、語らなければならないこと
仕事は無限に思える。
一人一人の人生の充実と幸福を願わなければ、指揮者は勤まらない。
成長しよう!戦おう!
戦慄という感覚を忘れてはならないのだ!
安楽な人生を望むようになったら、俺はおしまいだ。

そう言い聞かせて、また仕事にのぞもうと決意した。