夕陽からこぼれ落ちた光の道が、
波に揺られるごとに色を増しながら海に拡がっていった。
赤銅色に染まりゆく波のうえに影絵のようなサーフィンが三艘、
木の葉のようにゆらゆらと揺れていた。
昼間のぎらつく太陽は、真夏のそれと変わらなかったのに
海辺の夕暮れの陽射しは、秋の色を隠しきれず...
今日の常願寺川は、いつもとは見違えるほどに膨れ上がり
押し寄せる波をも呑みこんで、外海に流れ出し
どこまでが川なのか海なのかさえ、もう見分けもつかなかった。
昨日までの雨が無数の水の道を駆け下りて
渾然と混じりあいながら競うようにここまで落ちてきたのだろう。
かつて暴れ川と呼ばれたこの川の本性が俄かに蘇ったのか...
凄まじい圧力で海になだれ込み、
せめぎ合い、からみ合い、抱き合いながら、やがて海に溶けこんでいるのだ。
そんな水底の闘争をよそに、波は緩いカーブを描いてゆったりと揺れている。
少年たちの笑い声が、風に途切れながら聴こえてくる。
たまに盛り上がる波に乗って立ち上がってはボードから落ちる。
河口に作られたデッキの手すりにもたれた女子高生が一人
静かに彼らの姿を眼で追っている。
生きるとは...
生きていくとは...
なんと危うく、そして悲しいことだろう...
海の色が増すごとに濃くなっていく
よるべなき四つの若者の影を眺めながら
そんな感傷に浸る
やがて陽は落ち一人取り残された僕は、
デッキに座って潮騒を聴きながらいつしか眠ってしまったようだった。
ふと気が付くと海の上に月がのぼっていた。
海に映る月を見て、ふとあいつのことを想い出した。
一緒に月を見上げながら語り合った夜のことを...
彼が逝って8度目の9月になっていた。