ほとんど散り終わってしまった紅葉の
隙間から射しこんだ西陽が
残った葉をところどころ照らして
鮮やかに光っていた。
冷たい風がふわっと吹くたびに
赤や黄の葉が、はらはらと舞い落ちて
足元の落ち葉の上に音もなく積もっていく...
岡崎東公園...
仕事の打ち合わせを終えて帰る途中、不意に立ち寄ってみた。
まばらになってしまった葉の間から見える碧い空が見える。
カメラのファインダーを覗くと、
小さな葉の連なりが、宇宙に連なる銀河の星々に見えた。
頭上を覆い尽くすほどの紅葉もいいけれど
このシルエットもいいな...
足元に積もった柔らかな落ち葉を踏みしめながら歩く
落ちたばかりの鮮やかな葉...時間が経って萎れた葉...枯れてしまった葉...
生命の様相は、散ってなお多様で美しい。
その落ち葉の間から、今年芽吹いたのであろう葉が二枚しかない楓が
いつか大木になってやろうという不逞な面構えで、そのまま紅葉していた。
森には無数の生命が溢れ、無数の生死が横たわっていた。
この季節になると読み返す宮本輝の『錦繍』
宮本輝の作品に出会ったのは『泥の河』であったが
生涯彼の作品を愛し続けることを決定づけたのは、この作品であった。
そして、美しい紅葉を見上げると、生死について思いが巡っていくのである。
- 作者: 宮本輝
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1982/03
- メディア: 単行本
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「生きていることと、死んでいることとは、もしかしたら同じことかも知れへん。
そんな宇宙の不思議なからくりを、モーツァルトの音楽は奏でているのだ。
星島さんはそう言わはりましたなァ」
突然何を仰言りたいのだろうと、私はじっと御主人の口のあたりを見つめました。
御主人はしばらく考え込むようにしていらっしやいましたが、やがてこう仰言ったのです。
「私は、モーツァルトのことは誰よりも知ってるつもりでした。
私以上に、モーツァルトを聴いた人は、そんなにたくさんいてるとは思えん。
そのくらい、モーツァルトのことに関しては自信を持ってました。
そやけど、モーツァルトの音楽を、星島さんが言われたようには考えたことがありませんでした。
私はあれ以来ずっと、星島さんの言うた言葉の意味を考えつづけて来て、いまそれがわかりました。
星島さんの言うとおりです。
モーツァルトは、きっと、人間は死んだらどうなるのかを、音楽によって表現しようとしてたんですよ」
おまけ
岡崎東公園 紅葉アルバム