睡蓮のごとく...

大船植物園...
清楚な白い花が、水面にその姿を映しながら、
すくっと立っている姿は
見事というしかない完璧な美しさであった。
泥の中から芽を出し、
水面に浮かび上がった花の清楚な美しさは
古代文明の時代から世界各地で愛され、清くそして強く生きる象徴であった。

宮本輝の『睡蓮の長いまどろみ』の主人公順哉の産みの母美幸は、
泥のような家庭で生まれ育った。
彼女の人生は、まさに睡蓮が泥のなかから這い上がって花を咲かせるような姿だった。

「私は私を成すものの力次第で、何百何千もの人生を選ぶことができる。
 それが否応なく与えられたものであろうとも、よしんば自分で選んだものであろうとも、
 私は自由自在に自分の人生を作っていけるはずなのに、何を怯えているのか...。
 宿命は変えられないと誰が決めたのか...。
 不変の宿命にいいように牛耳られると決まってるなら、
 人間という生物なんてこの宇宙では無用じゃないのか。
 これは十九歳の私が考えたのか、橘のおじさんがそれに近い何かの言葉で語ってくれたのか、
 それとも、そのときにぼんやりと考えた何かが年月を経て、
 やっと私の考えとして言葉になってきたのか、
 そこのところはいまもよくわからないんだけど...。
 四十三年前の夜以来、間違いなく、そのぼんやりとした考えが私のなかで育ちつづけたの。
 あなたを産んで、それは、もっとはっきりと形になったの」
何がどのように形になったのか、それをこれから語りたいと思うが、
宿命などというものに負けてたまるかとひそかに心に期した途端に、
そんな私を試すかのように、いや、あざ笑うかのように、
宿命はこれでもかこれでもかと襲って来たのだと美雪は言った。
私が闘おうと決めたからよ。だから宿命は私をねじ伏せにかかったのね。
 宿命ってのは、それぞれの人間のなかで生きてる生き物なのよ。
 飼い主は他ならぬその人自身... そのことが、この歳になってやっとわかってきたわ」
   宮本輝『睡蓮の長いまどろみ』



睡蓮の池から周囲を見渡すと、幾種類もの花菖蒲が見える。
近くに行ってみると、100m以上もある細長い窪地に膨大な数の花菖蒲がいっせいに開いていた。
その種類も数十種類...
伝統的な江戸系・伊勢系・肥後系...そして大船系 もっとも原種に近いという長井古種...
こんなに多くの種類を観たのは初めてのこと
(各系の詳細は、Wikipediaで、アヤメ・ショウブ・カキツバタの見分けも書いてあります)
自分の好きな色あいや形を探しながらゆっくり歩く。

「朝日の峰」(長井古種)

「三夕の感」(肥後系)

「口紅」(伊勢系)

「万里の響」(江戸系)



温室も充実していて、ブーゲンビリアの種類の多さにも驚く。




二時間かけても、観足りない...
17時の閉園まで居て...
ライブの前に、山手の友人が営む喫茶店に寄り道をして...
日吉のライブ会場に向かった。
その後は、昨日の日記で....


おまけ 大船植物園 花のアルバム 
1)睡蓮(熱帯系睡蓮も含む)
2)花菖蒲
3)そのほかの花々

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