ペーパーナイフ

宮本輝先生の小説は、全作品読んだが
他の本を読んでいるときも、常に宮本作品は読むようにしている。
繰り返し読むことで、以前には感じなかったことを感じたり
自分の悩みの答えが見いだせたりするから...


「読む人にとって、なんらかの生きるよすがにならないような小説を、私は一編たりとも書きたくない」
宮本氏の若き日の誓い...
自分は、ずっと彼の作品を生きるよすがとして共に生きてきた。
宮本文学との出会いがなければ、今の自分はないと思う。


最近、無作為に書棚から抜き取って読み返した作品の中で『海岸列車』と『睡蓮の長いまどろみ』に
共通して、手製のペーパーナイフが出てきた。
『海岸列車』では、血のにじむような苦学の末、アメリカ留学からビルマに帰って弁護士となった青年が
病に伏して、若くして亡くなる直前にアメリカで同室だった親友の二人のために
白檀の木でペーパーナイフを作って遺したという場面...
そのペーパーナイフは、彼の死後しばらくしてから親友の一人である戸倉のもとに届く。
そこにビルマの言葉で
「私利私欲を憎め、私利私欲のための権力と、それを為さんとする者たちと闘え」
と刻まれていた。
『睡蓮の長いまどろみ』のなかでも、主人公の友人がペーパーナイフを彫って、主人公にプレゼントする。


たまたま、その二つの作品を続けて読んで、自分でもつくってみたいと思った。


ゴールデンウィークは、特に出かける予定もなく...
先日ヤフオクで買っておいた、アフリカ紫檀の木を彫り始めた。
彫刻刀では、なかなか彫り進まないので、ホームセンターで小刀を買ってきて...
デザインはどうすればよいのかわからないので、ネットで見た形を見よう見まねで
できるだけ薄く、そして持ちやすいように握ってみたりしながら...
なんとか彫りあげた。

一作目にしては、まあまあの出来かも


何本か作っていくうちに、もうちょっとましなものができるだろう
人にプレゼントできるくらいのものができるようになったらいいな。




夕方、緑道を散歩...