枯れ野を歩いて...

夕暮れ迫るふるさと村
枯れた紫陽花が夕陽に光っていた。


いさぎよく散りもせず...
灼熱の太陽に焼かれ、風に吹かれ、
雨に打たれ、霜に凍え...
すっかり枯れ果てても
ずっとこうして、ここに立っていた。

クジャク      まど・みちお


 ひろげた はねの
 まんなかで
 クジャクが ふんすいに
 なりました
 さらさらさらと
 まわりに まいて すてた
 ほうせきを 見てください
 いま
 やさしい こころの ほかには
 なんにも もたないで
 うつくしく
 やせて 立っています


昆虫を呼び寄せ、人の目を引いた美しさも、もう必要はない。
大事なものは、全部まわりにくれてやった。
あとは、やさしいこころ以外に何もいらない。

宝石を、まわりにまいて捨てた...そんな姿が美しい。



山道を歩くうちに、夕陽は赤みを増しながら堕ちていく...
前方に目を向けると、こんな時期に紅葉が...
そんなはずはないと近寄ってみると、枯葉に夕陽があたって
朱く染まっていたのだ。


やがて春が来て、新緑の季節になる頃には、枯れた草木は姿を消してしまうだろう。
しかし...
生命が美しいのは、若く華やいだ時期だけではない。
生老病死を経て、時間とともに衰えていっても尚、その時々の美しさはあるのだ。
そんなことを思った、枯野の散歩。