心は巧みなる画師の如し

金沢から能登半島にかけて旅をしてみたいと
以前から思っていた。
仕事で来ることはあるまいと思っていたが
今週は、加賀から砺波・富山と
営業で行くことになった。


17日午後2時に同僚と加賀温泉駅で待ち合わせ
朝いちばんの新幹線で出て10時過ぎに加賀温泉
天気は曇り時々雨... 北陸地方特有の厚く重い雲が空を覆っている。
レンタカーを借りて、まずは海岸へ...
加佐の岬は、断崖の上に小さな灯台がたっていた。


空を映した海は暗い色をしているが、崖の上から覗き込んだ海岸線は青く澄んでいる。


次に目指したのは、柴山潟を囲む片山津温泉...
「雪は天から送られた手紙」と言った、中谷宇吉郎の研究が展示されている
「雪の科学館」に行ったが、あいにく休館日。
湖沿いの道を行くと、何やら美術館のような建物があったので寄ってみると「片山津温泉街湯」という看板
どう見ても温泉には見えないが、とりあえず入ってみると券売機があったので、入ってみることに...
金沢市出身の世界的建築家で、ニューヨーク市近代美術館などを手掛けた谷口吉生氏の設計という
全面ガラス張りのシンプルな建物。
風呂の設計もいたってシンプルだが、大きな窓の外には竹林が見える。

温泉の庭から見た柴山潟


温泉を出て、火照った顔を外の風でさましてから駅で同僚を拾って客先へ...
午後から雨が激しくなる。
仕事を終えて、次の目的地金沢へ...大雨だったので、ホテル前の居酒屋で軽く一杯...


翌朝、早起きして仕事の前に散歩をしようと外に出る。雨は再び小降り...
古い町並みをゆっくり歩いて、兼六園を目指す。
作り物っぽくなくていい感じだな。


約10年ぶりの兼六園...紅葉が少しだけ始まっている。
雨に濡れた苔が美しい。
ゆっくり観て歩きたいところだが、仕事の時間があるので急ぎ足で歩く。



金沢城を抜け、近江町市場を通ってホテルに戻り、

チェックアウトしてから電車で砺波に移動。
駅前でレンタカーを借りて客先へ...


仕事を終えてレンタカーを返しに行く途中。
雨が上がって西の空が明るくなった。
空全体を覆っていた雲から、突然真っ赤な夕陽が現れる。


車を停めて、雲の切れ目から山に沈んでいく夕陽を眺める。幻想的だ
太陽がぼけないように、シャッタースピードを短くしたら、周囲が真っ暗に写ってしまったが...これもきれいだ。

陽が沈んで、灰色の重い雲の端が朱に染まる。
夕陽の粒子が散乱して、バイオレットグレーのグラデーションができる。
なんと美しい景色だろう。

しばらくたっていたが、あっという間に空の色は醒めていって、真っ黒な夜が来た。


美しい光景を眼に焼き付けながら、
『心は巧みなる画師の如し』という言葉が浮かんできた。
宮本輝の新作『水のかたち』の一場面で、引用される言葉...
巧みな画師の描いた絵のように、心は描いたことが現実にそうなっていく。
だから、悲しいこと不幸なことは思い描いてはいけない。
楽しいこと幸福なことを思い描いていれば、必ず現実もそうなっていく。
仕事は思うにまかせぬことばかりだけれど、
こうして各地を旅してまわり、美しい世界に触れることは、ずっと思い描いてきたことではないか...
若いころから旅が好きで、ひとりでいろいろなところに行った。
大人になったら、いろいろなところに行きたいと思っていた。
そのとおりになっているな...
諦めてはいけない...「心は巧みなる画師の如し」なのだ。
幸福をいつも思い描いていかなければ...