極細蕎麦@松本

出張で久しぶりの松本...
うまい蕎麦でも食べたいな〜と思って
ネットと駅ビルの本屋を物色。
店構えの地味さとメニューのシンプルさで
『野麦』という町外れの店を選ぶ。
駅から1km弱
住宅地を抜けていった一角に、その店はあった。
一間ほどの狭い間口...店内は見えず、ちょっと入りにくい感じ...
目の前にある黒い土蔵造りのカレー屋に、一瞬心が動いたが、やっぱり蕎麦を食べることにした。

引き戸をあけると、やっぱり狭い。4人掛けのテーブルが3卓のみ
満席だったので、待ち合い用のベンチに座って待つこと10分...「どうぞ」と言われて席に座る。
メニューは「ざるそば(1人前)」「ざるそば(1.5人前)」「きつねそば」以上!
いたってシンプルだ....つまり蕎麦自体に自信がある証拠だ。


しばらく待って出て来た蕎麦は上品な極細麺で香りがよく、汁とのバランスがとてもよく美味しかった。
咀嚼するほどに口の中に広がる蕎麦の香りを味わいながら、
この店の若くて美しいおかみの、忙しく立ち回る姿を目で追う...あかんあかん、人妻や...


客先の打ち合わせは予定どおりに終えて、帰りはあまりに天気がいいので
タクシーで来た道をゆっくり歩いて戻る。
旧制松本高校の前を通ったので寄り道し、松本城周辺も久しぶりに歩いてみる。



昨日のこと...新規開拓で製品を納入した客先でトラブルが起こった。
圧力が上がるはずのない圧力容器の中で、2月の納入時から保管中に圧力が上がっていて
客先で開けた瞬間に空気とともに内部の薬剤が噴出したというのだ。
すぐに現場に駆けつけたが、確かに内部にあった粉末が数十g程度積もっている。
聞き取り調査の感じからすると、数十kPa程度の圧力と思われるので、
怪我をするような危険な圧力ではないし、吹き出た薬剤も人体に有毒なものではない。
しかし、クリーンルームという場所がいけない...
そのうえ、このことで工程が止まってしまった。
現場の技術者の間では大きな問題として取り上げられ
9人もの技術者に取り囲まれて、矢継ぎ早に質問が浴びせられる。
とりあえず会社に現状を報告して、古くからいる技術責任者に過去の事例や原因等聞いてみるが
「そんなはずはない」という回答しかない。
とにかく技術レベルの低い会社なので、味方さえあてにならない。
焦ってはいけないと自分に言い聞かせ、質問を受けながら表情を変えずに、考えを巡らす。
そこでいくつかの可能性について考えを述べる。
優秀な技術者9人の視線が体中に刺さる。
いい加減な思いつきの発言は許されない。
その場では結論が出ずに持ち帰りになったが、先延ばしにはできない。
一歩間違えれば、ポテンシャルの大きいせっかくの新規開拓が無になりかねない。
そんな緊張感の中で打ち合わせは2時間
会社の後ろ盾がないまま、現物を一度引き取って調査することで打ち合わせ終了。
ここでのでの経験はまだ1年弱...会社の援護を受けられない中で
密室で起きた事件を解明するために、3日以内に実証試験を行なって回答をまとめなければならない。
極度の緊張を解くために、帰りに映画を観た。
そして、帰宅後に調べ物をし、考えうる可能性を洗い出す。


今日の出張は外せなかったので、往復の時間を使ってさらに計画を具体化する。
松本の爽やかな風のなかでの散策は、心をリラックスさせ、思考をクリアにしていった。
茶店に入って、計画を書き出し、準備しておくことを現場に依頼して
週明けのプレゼンテーションの筋書きまで一気に作り上げる。

一通り作って店を出たら、松本の街は日が傾きはじめ、
爽やかな風が街路樹を揺らしていた。