辛夷の花ひらく

午前中予定していたアポイントを
午後にしてほしいというメールがあり
14時の打ち合わせの後に変更したので、
午前中は、すっぽり空いてしまった。


レンタカーは8時に予約してあったので、
昨夜観た桜並木を歩きながら、レンタカー屋に向かう。
夜は、ライトアップされた桜だけが映っていた川面には、
青空がそのままの色で映っている。
相変わらず人は少ない。


レンタカーを借りて、海岸沿いを通って東へ...
ホタルイカの漁場 滑川
霧がかかって遠くが見えない、凪いだ海を眺めていると
そのなかから、こつ然と小さな漁船が現れる。
そんなふうに春が来た。


厚く重い雲に覆われた、冷たく暗く苦しい北陸の冬は
一気に春へと転じたようだった


民家の庭に咲く水仙の群れが...ふわっと開いた辛夷の花が...
霞を纏った立山連峰が...雪融け水で増水した川の激しい流れが...
春の歓びに満ちている。



しかし...
なぜだろう
胸苦しいほどの憂鬱が、突然湧き上がり、動悸がしてあわてて川のほとりに車を停める。
どうしたというのか...理由のわからない憂鬱は...


午後の打ち合わせの最中も、
その胸苦しさはずっと心に留まって去らなかった。


春への嫉妬... そんな言葉が浮かぶ
明るく眩く色彩に溢れる幸福な春
陰鬱で愚かで臆病な自分
ドブにはまったたま、抜け出すこともできずに
いつしか諦め半分... 
現実から目をそらして生きている日々...
どう生きればよいのか
気持ちが春に追いつけないのかもしれない。


帰りの電車は、酒を3本飲んで眠ったが
目が覚めると、まだそこに奴は立っていた。
帰宅してクスリを一錠