雪化粧

夜半から、雪は静かに降り始めた。
目が覚めると、一面白銀の世界。
6時に布団から這い出して、外に出る。


海には波もなく湖のように静まり返っている。
雪を踏みしめる自分の足音以外には何の音もない静寂。
水墨画の中に迷い込んでしまったような、モノクロームの風景の中を
海岸に向かって歩いていく。
それにしても、なんと静かな場所だろう。なんと美しい海岸だろう。







外海が見える場所まで来ると、壊れたままの堤防や倒れたままの家が見える。
ここから先には、あの日地獄のような光景が広がっていたのだろうか...
その境目...一階が流されてしまった倉庫のような建物の前に来たとき
思わず足がすくんだ。


その先には建物の基礎のようなものがあるだけで、すべてが流されてしまった跡だけ
そこから先に自分のような者が足を踏み入れてはいけないような気がして、
一歩も前に出られずに引き返した。


宿で朝食をとって、皆で記念撮影をし
奥松島 宮戸市民センターへ...
地元の牡蠣を地域の方にふるまう「かきまつり」のお手伝いのため...
震災後初めての試みとのこと
ボランティアの方々と一緒にテントを設営したり、炭焼きの火を起こしたり。
三々五々と集まった方々に焼き牡蠣と牡蠣なべをお配りする。
被災地での厳しい生活と闘っておられる方々に笑顔が浮かぶ。
東京から来て、小学校で寝泊まりしながらボランティアを続けているという青年。
観光バスで物見遊山に来るツアーのこと...沖縄から何度も応援に来る青年のこと
隣の仙台からボランティアがほとんど来ないということ...
報道できない様々な問題がまだまだあるとのこと...



来訪者が落ち着いたところで、われわれも牡蠣をいただく。
焼き牡蠣・牡蠣なべ、そして牡蠣フライ... どれだけ食べただろう?
多分、過去10年で食べたくらいの牡蠣を一度に食べたかな...
片付けの後に、またげんちゃんハウスで牡蠣フライ定食を注文。


被災者の皆さんとボランティアの方々に別れを告げて
彼らの幸福を祈りながら、被災地を後にした。
たった数十kmしか離れていない仙台の街は、震災の影はどこにも見当たらず
光のページェントというイベントに集まった人でごったがえしていた。