森を抜ける近道

朝から冷たい雨
千葉まで営業に出かけたが
早く終わってしまったので、
横浜に戻り、石川町に寄り道。
買い物をしてから
山手駅前の「サントペペ」へ...
震災の二日前に友人と集まって以来なので、約1年ぶり。
http://d.hatena.ne.jp/mui_caliente/20110309
(写真は、娘からもらった今年唯一のチョコレート)

高校の同級生というだけで、話をした記憶もほとんどないKさん。
恵比寿のK君の以前の店で20年ぶりに再会し、ここで店をやっていることを知り、来るようになった。
それから10年...いつ行っても、何も変わらない安心感...
1年ぶりに会っても、昨日会ったように普通に会話が始まる。
学生時代にここでアルバイトをして、マスターと結婚したKさん
30年近い年月を、ご夫婦で一緒にここで一日を過ごしているなんて。。すごいことだな。
二人で、いったいどれほどのお客さんを迎え、何杯の珈琲を煎れてきたのだろう...
同級生なのに、自分より10歳は若いのではないかと思ってしまうKさん
少し歳が離れた寡黙なご主人は、いつも厨房の奥に立って微笑んでおられる。
中途半端な時間でも、常連らしきお客が入れ替わり立ち代わり地下への階段を下りてきて
コーヒーを一杯飲んでは帰っていく。
いつも座る厨房に一番近い席に座って2時間ほど話をして店を出る。
階段を上がって地上に出ると、雨はあがっていた。


飯田善國著『ピカソ

ピカソ (岩波現代文庫)

ピカソ (岩波現代文庫)

彫刻家であり詩人でもある飯田氏が、ピカソの生涯と作品を考察した一書。
「青の時代」からキュビズムの確立まで...
同じ作者のものとは思えないほどの変化が、絵を見ていただけでは理解できないが、
この本を読むことで、ピカソの内面で繰り広げられたの闘争と革命が
作品を通して、なんとなくではあるが、わかったような気がした。

十歳で どんな大人より上手に 描けた
子供の ように描けるまで一生 かかった
(中略)
きみが 屈辱に 涙するとき
きみが 生の 苦痛に のたうつとき
ピカソ の 果敢な
戦い は
きみ
を 勇気づけて
くれる だろう

きみ

太陽 と なって くれる
だろう!

「子供のように描けるまで一生かかった」のだ...90年もの歳月をかけて...


自分は、一生かかって何を成し、どこに行きつくのだろうか?
いつの間にか転落し...道に迷って何度も挫折して...
双六でいえば「もう一度スタートに戻る」なわけだ...50歳にもなって...もう残り時間は少ない。
そんなことを考えて家に帰ると、埼玉のKさんからお手紙が届いていた。
一番苦しいときに、真っ先に連絡をいただく、ありがたい先輩だ。
半年ほど前に体調を崩されて、しばらく療養されていたが、お元気になられたとのこと...

うんと悩んだ日々こそ、一番不幸だと思った日こそ、あとから振り返ると、
一番かけがえのない日々だったとわかるものだ。
だから苦しみから逃げず、苦しみの真ん中を突っきって行くことだ。
それが森を抜ける近道だからだ。

苦しみの真ん中を突っ切ることが、
「森を抜ける近道」か…
出遅れてしまった自分は、近道をしないと、もう間に合わない。
が.... この薄暗い森がどこまで続いているのかは、わからない。
抜け切れないのではないか...


夜の沈黙の中で、Kさんの思いに胸が熱くなった。