雲間の星

夜...自宅に先輩のI氏が来訪。
病気のことを心配して、仕事帰りに寄ってくださる。
親身になって話しを聴いてくれた上で、I氏のご親戚や知人の病気の体験を交えて
この病気との付き合い方を丁寧にアドバイスしてくれる。
うつ病は、風邪のようなもの...
しっかりと自分の状態を判断しながら、休むべきときはしっかり休み
動けるときは、できること8割程度したらいいのだと...
但し、万病のもとではあるから、こじらせないように気をつけなければいけないとも..
仕事についての焦る思いも全部聴いてくれて、
まっすぐな心で生きてきたし、これからもそうしていけば
必ず自分では予想もできない最高の結果になるから...と言われた・
最後に、ロマン・ロランの「英雄とは、できることをやり続けた人」との言葉を
教えてくれた。


失業や病気を通して、どれだけ人の心の温かさを感じてきたことだろう。
ブログのコメント・メール・電話...毎日のように、何人も何人も...
励ましのメッセージが春の雨のように降り注いでいる。
しばらく音信の途絶えていた友人Aさんからも、
日記はたまに読んでいました...とのメッセージをいただいた。本当に嬉しかった。
ありのままの、情けない自分を書き続けてきたことで
多くの人々の温かい思いを、いま全身に浴びている


宮本輝『地の星』

流転の海 第2部 地の星 (新潮文庫)

流転の海 第2部 地の星 (新潮文庫)

主人公松坂熊吾の妻房江..その義妹、美津子。
彼女は戦争で夫を亡くし、その後足の不自由な子連れの男と結婚する。
しかし、その男も間もなく亡くなってしまう。
星空を見上げながら熊吾が房江に、美津子のことを語る...

「何が幸福の種か、人間には区別がつかん。
 もし美津子が辻堂と所帯をもっちょったらと思わんでもないが、
 幸不幸の帳尻は、その人間が死ぬときに決まるもんじゃ。
 いまの不幸が、将来、どんな幸福へ変わるか、誰にもわかりゃせんけん」
(中略)
「鼻をつままれてもわからん闇の中では、
 遠くの星ひとつでも提灯の役割をするっちゅうことは、
 都会の人間にはわかりよらん。
 ほんまの闇っちゅうもんを知っとる人間には、
 たったひとつの星のすごさがわかる。
 美津子は、なんとまあ不運な女じゃろうと人は考えるが、
 雲が切れたら、どれだけぎょうさんの星が
 美津子の頭上にあるやもしれん。
 雲さえ流れて切れたらええんじゃ。
 そんなものは、必ずいつか切れてしまいよる」

美津子を自分に置き換えてみる。
3年間という間、ほとんどすっきり晴れたことのない心の中の空...
失業に病気まで重なって、闇夜を歩いているような今の自分。
満月の晴れ渡った夜しかしらなければ...
暗闇の中の雲間に出たひとつの星の明るさを感じなかったかもしれない。
自信に充ち溢れた頃は、
一人の友の温かさに感謝できない自分だったかもしれない。
今は、ひとつの星の灯りに心から感謝できる。


どんなに厚い雲の上でも、星はその軌道を変えることなく輝いている。
雲さえ流れていけば、そこには無数の星が現われるはずなのだ。
そのときのために
いまできることをして、時を作り、時を待とう。