前回の日記からずっと、風邪をひいて寝ていました。
熱は36.9〜37.5°の間を行ったり来たり。
歳をとると、このくらいでもだるいもので...
こうしている今も、微熱が続いております。
体調が思わしくないので部屋に籠り、布団にくるまってひたすら読書。
宮本輝の『約束の冬』をきっかけに購入した、錦三郎著『飛行蜘蛛』
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山形県南部米沢盆地周辺...
晩秋から初冬の小春日和の日、綿雪のようなものがいっせいに空を飛んでゆく。
この現象の後に雪が降り始めることから、この地方では"雪迎え"と呼ばれていた。
教師であった著者が、この不思議な現象を追いはじめるところから始まる
日本版のファーブル昆虫記。
錦三郎氏は、生物学者でもなんでもない。専門は国文学。
何年もかけて観察を続け、蜘蛛が空を飛ぶ行動であることをつきとめ、
さらに蜘蛛の種類や生態について観察を続け、さらには歴史上の文献や
海外における"雪迎え"について研究していく。
平安時代以降、和歌や俳句に出てくる「かげろふ」は、この雪迎えであろうと思われる。
また、イギリスでは、小春日和(goose summer)がなまって、gossamerと呼ばれ
フランスやイタリアなどでは聖母の紡ぐ糸という意味の言葉があてはめられて
いるという。またエンゼルヘアーという表現もされている。
井上靖の『しろばんば』に出てくる"しろばんば"
...子供たちが追いかける空を浮遊する白い綿のような生き物も、
まさにこの現象と思われる。
気象条件がそろった時、蜘蛛は葉先や芦の先などに昇り、気流をはかりながら
空中に尻を向けて一気に糸を噴き出す。
そして、タイミングを見計らって空に飛び立つのである。
ほとんどが数メートル〜数十メートルで落ちてしまうのだが
運よく気流に乗ったものは、何キロも何十キロも先まで飛ぶという。
また、本当にうまく上昇すればジェット気流に乗ってしまう可能性もあるという。
南極で蜘蛛が発見されている事実からも、これはありえる。
しかし...考えてみれば、何故危険を冒してまで飛ぶのだろうか?
今いる場所で、食べるものさえあれば生きていけるのに...
飛んでいる途中で鳥に食べられることだってあるだろうし
落ちた先にどんな過酷な環境や危険が待ち受けているかもわからない。
それでも、飛ぶための気象条件がそろうまで待って待って鬱屈をためて
その日になるとやむにやまれず、一気に飛び立つという。
布団の中で、未だ見たことのない光景を思い浮かべながら
小さな生命の健気さに感動しながら
"もっと遠くに""もっと高く"...という、生命というものの本質を見るような気がした。
『約束の冬』の日記はこちら→http://d.hatena.ne.jp/mui_caliente/20110103
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