山本周五郎『小説の効用』

現場責任者をするために必要な資格...「職長・安全衛生管理責任者」の講習を受講
今日・明日の2日間の講習である。早めに起きて、石川町の会場へ...


通りがかったマック...「月曜日朝8:00〜9:00コーヒー無料」の看板につられて入店
無料のコーヒーを飲みながら、山本周五郎のエッセーを読む。

小説の効用・青べか日記 (光文社知恵の森文庫)

小説の効用・青べか日記 (光文社知恵の森文庫)

原則として、小説は(読者に対して)多くの効用を持つものである。
よき一遍の小説には、活きた現実生活よりも、もっとなまなましい現実があり、
人間の感情や心理のとらえがたき明暗表裏がとらえられ、
絶望や不可能のなかに、希望や可能がみつけだされる。
こういうことが決して誇張でないことは、多くの小説家がその読者から受取る。
                      山本周五郎『小説の効用』

山本周五郎の作品は、最近遠ざかっているが、かつてずいぶん読みあさったものである。
純文学と大衆文学の区分を認めず、小説には良い小説と良くない小説があるだけだとし、
あれだけの名作を世に出しながら、文学賞を一切拒絶した信念。
あくまでも、一人の悩める人のために小説を書き続けた姿勢は凄い。
同じ本の中に収められた、ある女性読者からの手紙への返事に、その心が見える。

あなたのお手紙に、「...誰もがまことの幸福を得なければならないのに、
今はただ己の生きることに鎬をけずらねばならない暗い日々でございます」と
お手紙を頂いて...。
実際、我が国では、先祖代々庶民というものは、政治や道徳や経済というものによって庇護されないで、
おっしゃるとおり、大抵暗い日々を過ごしてこなければならなかったし、現在もそうであり、恐らく、将来も同じような状態が続くのだと、私は思います。
私が書く場合に、一番考えることは、政治にもかまって貰えない、道徳、法律にもかまって貰えない最も数の多い人達が、自分達の力で生きていかなければならぬ、
幸福を見出さなければならないということなのです。
一番頼りになるのは、互いの、お互いどうしのまごころ、愛情、そういうもので支え合っていく...、
これが最低ぎりぎりの、庶民全体が持っている財産だと私は思います。
暗い生活、絶望的な生活といっても、これは日本だけでなく、
或いは世界中の庶民というものがいつでも当面している問題だと思うのですが、
ただ、この中から我々を伸ばしたり、救ってくれるのはいつでも、人間同士のまごころでつながっている、このつながりだと、私は思います。
             山本周五郎『お手紙ありがとう』

目の前にいる、一人の貧しき庶民を励まそうという心は、多くのよるべなき人々の心に通じて行く。
さて、それでは自分にできることは何か。
自分にできる方法で、心をつくして目の前にいる一人を励ましていくことなのではないだろうか。
...と考えてみたが...今の自分は励まされてばかりで...あかん


マックを出て講習会会場へ...
わずか30人ばかりの受講者の中で、去年の仕事で知り合ったAさんにばったり出会う。
自己紹介の場面では、失業中と言えずタッキーの会社の名前を借りた。