『イチローの流儀』

プロ野球には、ほとんど興味がない。
小学生のころ、父に連れられて、王や長嶋の出る試合を見にいったことはあった。
大人になって一度だけ地元の横浜スタジアムに行ったが、それきり球場には行ったことがない。
自分の人生に何の影響があるのか...過剰な熱狂をする人々にもうんざりしていた。
何よりも嫌いなのは、プロ野球を報道するメディアや評論家(もちろんすべてではないが...)
お前らは、そんなに立派な人間なのか?と聞きたくなるような尊大な報道や批評。
そんなに言うなら、自分でやってみろと...言ってやりたくなる。
だから、ニュース以外で野球を見ることはない。


その中でも、ニュースに出てくるイチローのスーパープレイやインタビューだけには好感を持っていた。
松井の無理な笑顔と違って、いつも淡々と冷静に語る姿がニヒルで格好いい。そう思っていた。
借りていた『イチローの流儀』を読んだ。
イチローの流儀 (新潮文庫)
イチローの姿を間近で見てきた記者が、事こまかにイチローの生き方を綴っている。
徹底した自己分析。成長もスランプも、すべて自分に原因を求め克服していく力。
徹底した自己管理。体の作り方も食事の摂り方も、細部にわたるまで自分だけの流儀がある。
徹底した準備。試合に対する準備もひとつひとつが怠りない。
エピソードとして、小学生のころは父と一緒に野球のグランドどころか遠足まで下見に行ったという。
道具も本当にこだわり、また大事にする。
すべてに無駄がなく夢に向かって真っすぐに生きる男の生き方...迷いというものが感じられない。
その情熱の底にあるのは、きっと野球を心から愛し楽しむ心なのだ。


読めば読むほど、自分の生き方が情けなくなる。
なんといい加減であやふやな生き方だろうか...
自身の停滞を人のせいにしてばかりで、本当に厳しい闘いを自分に課していない。
このままでは、満足のいく結果など得られるわけがない。
変わらなければ...



夕方、恵比寿でタッキーと仕事の打ち合わせ。
若い頃から苦労して会社を経営してきて、いくつもの一流の企業から信頼を勝ち取っている。
彼も、自分のスタイルというものを、しっかり持っている。
いつもなんでも聞いてくれるのをいいことに、またしても愚痴を言ってしまい...
別れた後で恥ずかしい気持ちになりながら地下鉄に乗って、イチローの表紙の写真を見なおした。