遠雷

友人A君から電話
先週病気が悪化し入院。
やっと電話ができる状態になって
連絡をくれた。
面会時間に合わせて見舞に行く。


以前に同じ職場で出会い、開発の仕事を一緒にやり、彼から多くのことを学んだ。
彼がヘッドハントで転職した後も、付き合いは続けてきた。
10年ほど前に、無理がたたって病に倒れ、それ以後入退院を繰り返してきた。
2年前の入院以後は少し元気になり、在宅の仕事をして家族を支えてきた。
今年の春は一緒に花見もして、このまま元気でいてくれればと思っていたが...
酸素と点滴のチューブをつながれ、ベッドに力なく横たわる彼は別人のように痩せ細り
黄疸が出て、腹水が溜まった腹は大きく膨らんでいた。
イカリエンテの姿を見ると電動の背もたれを起こして、仕事のことを心配してアドバイスしてくれる
もう、そんなことはいいのに...感謝と申し訳ない気持ちでいっぱいになる。


もう厳しいかもしれないと、淡々と語る彼の視線の先には、
抜きん出て優秀な二人の息子さんの将来の姿が映っているように思えた。
前回だって、絶対絶命の状態から復帰したのだ。諦めてはいけない。
「必ず、元気になって復帰するんだよ」と言って病室を後にする。


今夜の月は悲しいほどに美しい。
東の空に輝く月と、北西の方角で光り続ける遠雷を交互に見上げながら、
彼と彼の家族の幸福を祈った。