100年間咲き続けて...

現場の仕事が予定より早く終わり、若葉色に染まり始めた山道を走って久しぶりに藍織成さんに寄り道。
染物と機織を生業とするOさん、近々、桜で染物をするという。
桜って、花で染めるのかと思いきや...なんと桜の木で染めるという。
それも、花の咲く前の木でなければならない。
その木を煮出して抽出した色は、鮮やかな桜色に染まる。花が咲いた後の木では、もうその色は出ない。
花の色は木の中を流れる血液のようなものなのだろうか?
厳しい冬を乗り越えて、体中に溜め込んだものを、春の到来とともに花びらの中に注ぎ込んで美の限りを尽くす。
生命の不思議を感じるを感じる話だった。
帰りに藍織成さんお勧めの桜の木を見に行った。
100年生きてきた桜は、大きく広がる枝いっぱいに星の数ほどの花を広げ、春の風にゆらゆらと揺れていた。
100年間絶えず成長しながら、100回の冬を乗り越え100回の春を繰り返し人々の心に感動と歓びを与え続けてきたのだろう。
風格を感じる立派な木であった。
人もまた幾たびの冬を越えなければ本当の美しさは身につかないのだと思う。
イカリエンテへの道は、まだまだ遠い修行の道である。