田園の真ん中に立って、静穏なる空を見上げてみる。
秋の蒼穹は、心を高きところへと導いてくれる。
『戦争と平和』(トルストイ)の中で
負傷したアンドレイ公爵が大空を見上げるシーンがある。
彼の上には高い空...晴れ渡ってはいないが、
でもやはり、はかり知れぬほどに高い空と、
そのおもてを静かに流れてゆく灰色の雲のほか、何もなかった。
「なんて静かで、穏やかで、荘厳なんだろう、
おれが走っていたのとまるでちがう」
とアンドレイ公爵は考えた。
「われわれが走ったり、わめいたり、闘っていたのとはまるでちがう。
あのフランスの砲兵が、互いに怒ったような、おびえたような顔をして、
洗棹を引張りあっていたのとはまるで違う。
おれはどうしてこれまで、この高い空を見なかったんだろう?
それにしても、おれはなんんてしあわせなんだろう、
とうとうこの空を見つけたとは。
そうだ!この無限の空以外には、すべて空(くう)だ、すべて偽りだ。
この空以外には、なんにもないのだ、なんにもないのだ、
しかし、それさえなのだ、なんにもないのだ。 静寂と平安以外には。
ありがたいことだ.....」
このくだりを読むと
心が晴れ晴れとする。
日々の小さなことで一喜一憂して、
多少の財産や名声や自分の小さな快楽のために生きるのは
あまりにもバカバカしいことに思えてくる。
先日も、『一握の砂』の「目を上げよ!」という一文を紹介したが
自分の上に、宇宙に連なる無限の空、があることを忘れてはいけないのだ。
厳しい現実があるほど、高きを見上げて生きねばならぬ。
さあ、今日も空を見上げて仕事をしよう!