七年目の桜

4月にしては少し強すぎる陽射に背を向けるように、八重桜がうつむいて咲いていた。公園には多くの家族連れが来ていて、子供たちが芝生の上を元気に走り回っていた。あの日も、そうだったな... その春... 入退院を繰り返していたM君が、生死の間を彷徨う瀕死…

山桜

滾々と湧きいずる清水の沢に、白い花びらがふたひら落ちていた。桜の花びらにしては小さいようだったが、つけ根の薄紅色は桜のそれだった。あたりを見回してみたが、こんな森の中に桜の木などあろうはずもない。森の外から風に舞ってきたのだろうか... 黒部…

花園にて

花園に続く細い坂道は、今朝まで降っていた雨にぬかるんでいた。 一歩また一歩と踏みしめながら、胸が高鳴っていった。 このところめっきり減ってしまった関西出張が、 この季節に突然入るなんて、奇跡のようなことだった。 僅かな時間の隙間を縫って、大阪…