48回目の誕生日

何事もなき、穏やかな一日。
風は冷たくも 陽光は温かなり。
近隣の家の生垣に薔薇一輪。
蒼穹を指して気高く開きたり。



薔薇の花を見上げながら、石川啄木の『君が花』を口ずさむ。

君が花


君くれなゐの花薔薇(はなそうび)
白絹かけてつつめども、
色はほのかに透きにけり。
いかにやせむとまどひつつ、
墨染衣袖かへし、
掩(おお)へども掩へどもいや高く
花の香りは溢れけり。


ああ秘めがたき色なれば、
頬にいのちの血ぞ熱(ほて)り、
つつみかねたる香りゆゑ
瞳に星の香も浮きて、
佯(いつ)はりがたき恋心、
熄(き)えぬ火盞(ほざら)の火の息に
君が花をば染めにけれ

蒼空に胸張って咲くこの花のごとく、気高く生きたい。
自らを磨き、内なる革命を起こしながら、薫り高き人物と交流しながら...
友のために社会のために生きることを、我が歓びとして...
情熱を燃え上がらせ、血をわきたたせながら
人格の薫るような人間を目指して、新しい一年を生きていきたい。


そんなことを思いながら、ぶらりと入った喫茶店
熱いコーヒーを飲み上がらページをめくった雑誌から飛び出した青年の5行歌に目が釘付けになる。

  泥の中から
  蓮は 花咲く
  そして
  宿業の中から
  僕は 花咲く

岩崎航(わたる) 33歳。1976年生まれの彼は、4歳で全身筋ジストロフィーと診断される。
20代で人工呼吸器を取り付けられ、自力で食事もできなくなって胃につながったカテーテル
栄養補給するしかない。
寝た切りの状態で、わずかに動く指先だけを動かして、特殊なPCに五行歌を書きこんで歌集を出した
「どれほどの苦悩を乗り越え、どれほどの絶望をねじ伏せてきたことだろう...」(記事引用)
その姿は不自由だけれど、心は蓮の花の如く天を向いて開いている。



そして、彼の名前を検索してブログを見つける。
http://skynote21.jugem.jp/
たった5行に込められた思いに、何度も何度も涙しながら
恐るべき精神力と心の深さに衝撃を受け、そして大きな勇気をもらった。

一部を抜粋させていただく 

辛かったその事より
なぜだろか…
力いっぱい励ましてくれた
その時のあなたが思い出されて
虹が 懸かるんだよ


何度でも
何度、摘まれても
芽吹くいのちの
微笑みは
悲哀を後にし蝶として舞う
 

降りかかる
この悲しみ痛みが
人たる宝冠
そう言い切れるほどの
根をはるために


悩みへの
果てなどはない
応戦こそが
一つの城を
築くと信じる


良かれ悪かれ
怒濤の波が
押し寄せるだろう
ものともしない
船つくるのだ


飛翔しようと
助走が極まった
ぼくの本気を見て
今 吹き出し
向かい風


新たな病に
涙がひと筋
ながれていった
でもそれは
熱いものだ


太刀を抜け
太刀を抜け
太刀を抜け
生命の奥座敷
据えてあるはず

太刀を抜け!太刀を抜け!太刀を抜け!
なんという力強い叫びか!

いくつもの絶望をねじ伏せてきた魂には、卑屈さも悲哀も..感傷のかけらさえ見当たらない。
闘おう! 勇気を出して、生命の太刀を抜くのだ!