幻の光

二見ヶ浦沿いのホテル。
朝の景色は海を見下ろすこのアングル。
休みをはさんで、ここに2週間滞在している。
梅雨の近づいた今朝の空は暑い雲に覆われ
それを映す海面もまた墨を流したように黒々としている。
突如雲を割って陽光が射し込み、海面の一部が光る。
遠くの島が霧の中に浮かび上がる。幻想的な風景。
光の海を追って、車に飛び乗り東へ...
海岸に出たときには、光の塊りは跡形もなく消えている。
ほんの一瞬の美しい幻の光
堤防の突端で変わり行く雲の様を見ている。
散歩の老人が来て声をかけられ、取りとめもなく話す。
海面の光は、二度と現れることはなかった。

...夕方、東の空の暗雲は払われて明るくなっていた